出会えたこと それだけで
春樹さんの家は、駅前の住宅街にある綺麗な一軒家だった。
「ちょっとまって、親に話すから」
「…はーい」
玄関のまえで、ぼーっと立って待つ。
遅いなぁ、と思ってたら、春樹さんがドアから出てきた。
なぜだか顔が暗い。
「春樹さん?」
「ごめん」
「あ、無理だった?
突然だもんね、また今度ね!
じゃあどこ行こっか?」
「どこも…行かない」
「え?」
様子がおかしい。なぜ?
「ごめん、もう会えない」
「何を、言ってるの…?
ねぇ春樹さ…」
唇をふさがれた。キスされた。
キスしたまま、強く抱き締められた。
なんだか本当にもう会えない気がして、あたしは強く、強く抱き締め返した。
「ごめんね。色々…」
春樹さんがささやくように話す。
「え?」
「色々、あるんだよ」
「色々って?何?」
「…俺ら」
「うん」
「…やっぱり、これは知らない方がいいと思うよ」
「なんでよ」
「バイバイ」
春樹さんは家に入って、ドアを閉められた。
なんで…急に?
涙をこらえて、家までの道をひとり歩いた。
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