だから、無防備な君に恋に落ちた
『絵美ちゃん、まだ?』
アイスがたくさん並べられたショーケースを絵美ちゃんはじっくりと見て、吟味している。
俺はその横で待ちぼうけ。
今日は俺の北辰の結果が良かったからのご褒美でここにきてるわけなんだが、絵美ちゃんはさっきから気になるのが二つあるみたいで、時間をかけて吟味してる。
って、もう10分…
いい加減、吟味しすぎじゃない?
『うーん…だってね?
ストロベリーチーズケーキも美味しそうだし、でもでもこの抹茶も美味しそうなの。
どっちがいいかな…うーん…』
結婚相手を決めるわけでもないのに、アイスごときに10分も悩むものなの、女子って?
『航汰くんはもう決まった?』
絵美ちゃんは俺の方に振り返り、問いかける。
今日、ようやく、ようやく、絵美ちゃんの顔をマジマジと見たかもしんない、なーのーに!
『俺はコーヒーでいい』
俺が答えると、絵美ちゃんの顔は呆気にとたれたというものに変わる。
『なんでアイス食べに来たのに、コーヒーなの?』
『あー、俺、甘いもん苦手…』
……そんなあからさまに悲しい顔をしなくても。
『…ご褒美だったのに、ごめんね…』
俺の言葉にコロコロ表情を変えるくせに、気持ちは変わらないのな…
はぁー…
『何と何?』
『…え…?』
『だーかーら、何と何で姫は迷ってんの?』
俺はショーケースを覗き込み、絵美ちゃんに問いかけた。
『…え…あ、えっと…ストロベリーチーズケーキと抹茶…』
『じゃ、俺、抹茶ね』
『…え、でも、甘いもの苦手…』
『抹茶、一口だけ頂戴、あとは絵美ちゃんにあげるから』
『…………なんで?』
『両方食べたいんでしょ?
俺の成績が上がったのは絵美ちゃんのおかげだし。
そういう意味で絵美ちゃんにもご褒美みたいな?』
自分で言いながらも、ちょっと照れくさくて。
ゆっくり絵美ちゃんの方に顔を向けると、絵美ちゃんは驚いた顔をしていた。
…へ…?
え、やっぱ、こういう感じ、ダメ?
俺も言ってて恥ずかしいんだけど、てかめっちゃ照れくさいんだけど…
『……ありがとう』
でも絵美ちゃんは俯いて、そう言った。
…?
『絵美ちゃーん?』
俺が少しかがむと、真っ赤な顔をしている絵美ちゃんがいた。