だから、無防備な君に恋に落ちた
『絵美ちゃん、顔赤いよー』
俺がそうからかうと、絵美ちゃんは赤く染めたままの顔で、俺の腕を叩いてくる。
『…うるさい!』
そう、言うけどさ?
そんな赤い顔をされて言われても、あまり効果ないっていうか?
『何、赤くなってんの?』
もう少し、からいからくなるんだよね。
だから、俺は絵美ちゃんの顔を覗き込みながら、問いかける。
『…赤くなってないよ!』
そう言って、絵美ちゃんは店員さんに注文した。
『あ、あとコーヒーで』
アイスのみのオーダーに俺は勝手にコーヒーを付け加えた。
『あ、そっか、コーヒーって言ってたもんね』
絵美ちゃんはそう言って、会計を済ました。
『こちらでございます』
すぐに手渡されたアイスを見て、絵美ちゃんの目は子供のように輝いている。
『ここにする?』
俺が声をかけると、絵美ちゃんは黙って座って、スプーンを取り出し、食べる気まんまん…
『いっただきまーす♪』
一口目を食べた瞬間に、絵美ちゃんの顔は驚いた顔になって、
『その反応、美味しいの、想像以下なの?』
俺の問いに、“前者、前者”、そう言って、微笑んだ。
『美味しい♪航汰くんも食べてみなよ』
そう言って、絵美ちゃんは自分が口をつけたスプーンで、ストロベリーチーズケーキのアイスを俺の口元に運ぶ。
絵美ちゃんって、キスとかは嫌がるけど。
間接キスはいいんだ…?
俺はそのスプーンに口をつけてもいいのか悩み、なかなか食べられないでいる。
『もう!』
絵美ちゃんはそう言って半ば強引に俺の口にスプーンを押し込んだ。
スプーンが入ってきた瞬間に口の中に広がる甘ったるしい味…
『……う…』
俺はすぐに飲み込み、手つかずのコーヒーを口にする。
コーヒーは口の中の甘ったるしい味を流し、俺に苦味を与える。
『本当に甘いの苦手なんだね?』
絵美ちゃんはクスクスと笑っていた。
『…なんか悪い?』
俺はぶっきらぼうに答えた。
でも、絵美ちゃんはそんな俺の言葉にもクスクスと笑う。
『なんにも』
でも、まだクスクスと笑ってる絵美ちゃんが可愛くて、でもなんか癪に障る感じで。
だから、攻撃。
『てかさ、間接キス、だったんだけど?』