だから、無防備な君に恋に落ちた
なんで来んの?
あれから一週間。
今日は本当だったら家庭教師の日。
俺は学校帰りに適当に時間を潰す。
もう絵美ちゃんの授業を受けることはない、でも、今まで絵美ちゃんと一緒に過ごすのが当たり前だったから、帰りたくない。
この時間は、あの部屋は、絵美ちゃんが強すぎて、今は無理…。
でも、そういう時ほど、時間の流れはゆっくりで、そして用事を作ることが難しかったりする。
『……帰るか…』
俺は一人呟いて、学校を後にする。
こんな時、“受験生”で良かったと初めて思った。
“受験生”のおかげで、勉強に集中すれば、そうすれば絵美ちゃんのことなんて…
『………え………?』
家のすぐ近くまで来たところで、家の前に立っている、身に覚えのありまくる人。
その存在に気がつき、俺の足は自然と止まった。
インターホンを鳴らして、家に入るでもなく、ただ家の前に立っている。
なんで、いんの…?
ただ玄関の扉を見つめる、その横顔。
俺は引き返そうかとも思った、けど、絵美ちゃんはずっとそこにいそうな気がして、俺は重い足をゆっくりと動かした。
俺に気づかない絵美ちゃんは玄関の扉を見たり、俯いたりを繰り返し、絵美ちゃんとの距離、半径3メートルのところで、絵美ちゃんは足音に気がついて、足音がするほうに、つまり俺の方に視線を向ける。
絵美ちゃんの視線がこちらに向いたところで、俺と視線が重なった、でも俺はすぐに視線を反らした。
『……あ…あの……』
絵美ちゃんは気まずそうに話しかけてくる。
『なんすか、もう先週で契約終わったっしょ?』
俺は冷たく言い放つ、そして門扉に手を触れ、一人中に入っていく。
『……うん………でも、あの……』
でも、絵美ちゃんの“あの”の後には何も続かない。
『何?』
振り返らず、そう問いかけるも、絵美ちゃんは黙ったまま。
絵美ちゃんの言葉に、間に、しびれをきらして、俺は絵美ちゃんの方に振り返った。
『報告でもしにきてくれたんですか?』
『……報告?』
絵美ちゃんは俺の問いかけの意味が分からなかったみたいで、眉間にしわを寄せる。
『あの人と付き合う、とか』
俺に言われなくても、気づいてくれよ。
こんな風に話すのだってキツいんだからさ。