だから、無防備な君に恋に落ちた
絵美ちゃんの唇は柔らかくて、何度も触れたくなる。
でも、そんな俺の願いも虚しく、絵美ちゃんは何度も抵抗を見せる。
だから、俺は片手で抵抗をしてくる、絵美ちゃんの手を掴み、もう片方の手で絵美ちゃんの頭部を固定させた。
『…ん…』
その甘い声が、俺の頭を白くさせる。
何も考えられない、何も考えたくない。
ただ、重なり合ってる、その唇から絵美ちゃんを感じたいだけ。
俺が唇を離すと、絵美ちゃんは解放された手で、俺を頬を平手打ちする。
『…ひどいよ……初めてのキスだったのに……ひどいよ……』
絵美ちゃんはそう言って、自分の唇を何度も何度も手の甲で擦った。
『最低? 最悪? 強引?
なんとでも言えば?』
俺の言葉に絵美ちゃんは擦るのを一度中断し、俺を見上げる。
『俺は好きでもない奴にこんなことしない』
絵美ちゃんはその言葉に、目を左右にキョロキョロさせ、もう一度、俺を見つめた。
『俺は絵美ちゃんのこと、恋愛対象で見てんの。
だから、俺以外の奴のこと話したら、キスで塞ぐよ?』
『……え……』
『俺以外なんて見ないで、俺のことを“男”として見ろよ』
俺の言葉に絵美ちゃんは、俺の方に視線があるはずなのに、どこか遠いところを見ているようだった。
『俺のこと、好きになれよ』
それが、俺のファーストキス。
それが、俺の最初で最後の恋の始まり。