兄貴がイケメンすぎる件
その瞬間、一瞬だけ時が止まったような錯覚に襲われて、あたしは健を見れずに前だけを向く。
「…え」
そして隣から健のそんな声がかすかに聞こえてきて、あたしは思わず身構えた。
今まであたしだって何回か人の告白を振ってきたけど、人を振るのはこんなにも胸が痛い。
あたしが黙って健の言葉を待っていると、そのうち健が言った。
「…そ、そっか」
「…」
「まぁ、なんつーか…いつかはそうなるんじゃないかって思ってたけどさ」
「…」
「こんなに早いとはね」
不思議と返事がしづらい。ってか出来ない。
健は今どんな顔をしてるんだろう?
それすらも見れないあたしは、いたたまれなくなってブランコの鎖を意味もなく強く握りしめた。
すると、そんなあたしに健がまた口を開いて言う。
「…でも、世奈が幸せならそれでいいんじゃない?」
「!」
「俺は世奈の味方だから、世奈が決めたことなら温かく見守るよ」
健はそう言うと、「じゃあ、帰るか」ってブランコから立ち上がった。
一方、そんなあたし達二人の姿を、
翔太が部屋の窓から切なく見つめていたとは知らずに…。