兄貴がイケメンすぎる件


「…っ、」



兄貴のそんな言葉に、あたしは一瞬何も言えなくなる。

兄貴はあたしを心配してくれているんだってことはわかるけど、あたしは…



それでも翔太が好き。



そう思うと思わず泣きそうになって、あたしは涙をこらえながら兄貴に言った。



「…やだ」

「は?」

「あたしはそれでも翔太がいいもん!」

「!」

「兄貴の言うことなんか聞かないからね!」



兄貴の目を見ずに強気にそう言って、あたしは路地裏を後にしようとする。

だけどその時一番言いたかったことを思い出し、後ろにいる兄貴に言った。



「…あ、あと、」

「?」

「あたし明日、翔太のトコ泊りに行くから」

「っ…はぁ!?」

「ばいばい、」

「ちょー待てや、世奈!!」



あたしはそれだけを言うと、後ろから聞こえてくる兄貴の声を無視してやっと路地裏を後にする。

歩いていたら兄貴が走ってきそうだから、慌ててカフェから離れた。


兄貴のバカ!兄貴なんか知らない!



そしてそう思っているあたしの遥か後ろで、兄貴がポツリと呟くように言う。



「…世奈のアホ。後で泣きついてきても知らんで、」



それだけを呟くと、独りカフェに戻って行った。


< 142 / 386 >

この作品をシェア

pagetop