兄貴がイケメンすぎる件
なんとかごまかせたかな…。
そう思って健の腕の中で安心していると、少し黙ったあと翔太が言った。
「…世奈ちゃん」
「うん?」
「会いたい」
「!」
その言葉に、思わず胸が締め付けられる。
だけどその声が聞こえたらしい健は、まるで「行かないで」と言っているみたいにあたしをより強く抱きしめてきた。
「でも…」
もう外も真っ暗だし。
健だって熱だしてるわけだし(こんなことしてるけど)。
「明日、会えるじゃん」
あたしがなるべく明るい声で言ったら、翔太は「やだ」と話を続けた。
「今会いたい。今すぐ世奈ちゃんに会いたい」
「!」
「ね、会おうよ。迎えに行くから」
翔太のどこか寂しそうなその声に、あたしはちょっと黙り込む。
…あたしだって、翔太が好きだし会いたいよ。
でも…。
あたしがどうしていいかわからないでいると、やがて翔太がまた声を低くして言った。
「…それとも、何?」
「え、」
「今、他の誰かと一緒にいるの?」
「!」
その言葉に、一瞬返す言葉を失う。
「…嫌な予感がするんだ。世奈ちゃん、相沢さんと凄く仲良いから」
「…」
「今頃、相沢さんと一緒だったらどうしようって、さっきからずっと不安なの」
そして、最後に「だから、胸騒ぎがするから電話した」と、そう言葉を付け加えた。