兄貴がイケメンすぎる件
その口パクを理解した瞬間、あたしの中で固まっていた心が一気にほどかれる。
…あ、なんだ……よかった…。
そして安心したあたしは、目の前の健に嘘いっぱいで頷いた。
「…うん。あたしも、健とだったら幸せになれる気がする」
あたしがそう言うと、お父さんは安心のため息を吐いた。
「そうかそうか、やっぱりそうなんだな。これで安心して九州に帰れる」
「うん、それならあたしも安心だよ」
…はぁ、やっとこの場はおさまったかな。
そう思っていると、あたしの傍にいた健があたしに言った。
「じゃあ俺帰るね。今日親帰ってくるし」
「あ、うん!ありがとね!」
そう言って玄関で健を見送ろうとしていたら、そんな会話を聞いていたあたしのお父さんが健に言う。
「健、帰るのか」
「はい」
「だったら送ってってやる」
「!!え、」
「久しぶりにゆっくり話もしたいしな」
お父さんはそう言うと、ちょっとびっくりしている健を連れて部屋を後にした。
あー、大丈夫なのかな…。
あたしはそんな二人の後姿を見送ると、兄貴がいるソファーに戻る。
すると、あたしがソファーに座るなり兄貴があたしに言った。
「お前さ、ほんまはどないすんねん。さっきのアレ」
兄貴はそう言うけど、あたしは笑って兄貴に言う。
「どないすんねんって、健とあたしが本当に結婚するわけないじゃん」
「…いや、せやけど…」
「?」
「でも……まぁ、アレやな」
「?」
「今の彼氏とは、どっちにせよ別れた方がええでってヤツや」