兄貴がイケメンすぎる件
その言葉に、俺は思わずその場に立ち止まる。
知らなかった。
世奈が、そこまで幼なじみの俺を好きでいてくれてたなんて。
それなのに俺は…。
俺が立ち止まると、おじさんも立ち止まって言った。
「だから、健」
「!」
「俺は、お前に世奈を任せたい。というよりか、これはお前にしか無理だと思ってる」
!!
「さっきは、困らせて悪かったよ。でも、安心した。
これでアイツは、もう一生寂しい思いをしなくて済むからな」
おじさんはそう言うと、優しく笑った。
「…ほら健、着いたぞ」
「!」
俺がおじさんの言葉にいろいろ考えこんでいたら、やがておじさんがそう言った。
「…ありがとうございます。送ってもらっちゃって」
「いいんだよ、久しぶりにお前の元気そうな顔も見れて安心した」
そう言って手を振ってくれるおじさんに見送られながら、俺は軽く会釈をして家の中に入る。
入った直後、俺はドアに寄り掛かって思わず後悔した。
世奈は、子供の頃あんなに俺を頼ってくれていたのに。
世奈には俺しかいなかったのに…俺は今までアイツになんてこと言ったんだろう…。
『うっせー』『邪魔』『あっち行け、ブス!』
『知らねーよ』『こっち来んな』『お前なんか大っ嫌いだ』
俺はそれを思い出すと、片手をぐっと強く握り締める。
…今、過去のことを悔やんでも…
世奈にはもう遅すぎんだよな…。