兄貴がイケメンすぎる件
「あ、翔太くん大変!世奈のっ…」
そして美桜が「携帯がない」ことを翔太に言いかけた瞬間、あたしは美桜の口を慌てて塞ぐ。
…翔太にだけは知られたくない。
「…なに?」
そんなあたし達に首を傾げる翔太に、あたしは笑ってごまかした。
「お、音楽の教科書忘れちゃって…」
「あ、そうなんだ。なら見せてあげるよ。どーせ隣だし」
「あ、ありがとう」
いや、あるけど。ちゃんと持って来てるけど。
「ってか早く行かないと間に合わないよ」
そう言って教室を後にする翔太の背中を見送ると、あたしは美桜の口から手を離す。
「何で言わなかったの!」
そしたら美桜にそう言われたけど、あたしは美桜から視線を逸らして言った。
「だって…携帯盗られるとかマヌケだし」
「何でよ、今のすっごいタイミング良かったじゃん!」
「あ、あとでちゃんと言うよ。どうしても見つからなかったら」
「…」
あたしは美桜にそう言うと、二人でやっと教室を後にして音楽室に向かった。
そんなあたし達の会話を、翔太が柱に隠れて聞いていたとは知らずに…。
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そして、放課後。
SHRが終わると、美桜があたしに目で訴えてきた。
…翔太の方に目を遣って、“言え!”とジェスチャーをしている。
どうやら、携帯がないことを「言え」と言っているらしい。