兄貴がイケメンすぎる件


「あ、翔太くん大変!世奈のっ…」



そして美桜が「携帯がない」ことを翔太に言いかけた瞬間、あたしは美桜の口を慌てて塞ぐ。

…翔太にだけは知られたくない。



「…なに?」



そんなあたし達に首を傾げる翔太に、あたしは笑ってごまかした。



「お、音楽の教科書忘れちゃって…」

「あ、そうなんだ。なら見せてあげるよ。どーせ隣だし」

「あ、ありがとう」



いや、あるけど。ちゃんと持って来てるけど。



「ってか早く行かないと間に合わないよ」



そう言って教室を後にする翔太の背中を見送ると、あたしは美桜の口から手を離す。



「何で言わなかったの!」



そしたら美桜にそう言われたけど、あたしは美桜から視線を逸らして言った。



「だって…携帯盗られるとかマヌケだし」

「何でよ、今のすっごいタイミング良かったじゃん!」

「あ、あとでちゃんと言うよ。どうしても見つからなかったら」

「…」



あたしは美桜にそう言うと、二人でやっと教室を後にして音楽室に向かった。


そんなあたし達の会話を、翔太が柱に隠れて聞いていたとは知らずに…。




******




そして、放課後。


SHRが終わると、美桜があたしに目で訴えてきた。

…翔太の方に目を遣って、“言え!”とジェスチャーをしている。


どうやら、携帯がないことを「言え」と言っているらしい。

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