兄貴がイケメンすぎる件
健のその言葉に一つだけはっきりとした心あたりがあるあたしは、その瞬間健から視線を外した。
だって…だってそれって、確実にアレしかないでしょ!
『…翔太、あたしと駆け落ちして』
『…うん。世奈ちゃん、僕んトコおいでよ』
『ずっと一緒にいよう、』
「…っ、」
そしてそんなあたしの様子に瞬時に気づいた健が、真剣な顔をしてあたしに問いただしてくる。
「…なに、何言ったの」
「いや、あの…」
「言えって、その顔は何か隠してるだろ、」
そう言って、あたしの顔を覗き込む。
だけど、言えるわけない。
“翔太と駆け落ちするって約束した”なんて。
「な、何もないよ!」
あたしは慌てて健にそう言うけど、そんな怪しいあたしの態度に健が騙されてくれるわけがない。
あたしが健から逃げるように平均台から立ち上がると、その腕をすぐに掴まれて、また座らされた。
「…逃げるってことは心あたりがあるんだよね?」
「…っ…ない!」
「世奈!」
「ないもん!」
ちょっと怒った健の声に、思わず涙目になりながら尚も首を横に振って否定する。
言えない。
絶対に言えるわけない!
そう思っていたら、また健が言う。
「…お前さ、この状況わかってないのかよ」
「……?」
「俺はお前のその勝手な行動のせいで、こんなことに巻き込まれてんの。部活にだって行かなきゃいけないのに」