兄貴がイケメンすぎる件
僕がそう聞いたら、世奈ちゃんは僕からゆっくり離れて…
「…大丈夫だよ」
そう言ってまた、ぎこちなく微笑んだ。
…うそだ。
だってその顔は…。
……だけど、聞けない。わかってるけど聞きたくない。
傷つきたくないから。
そして世奈ちゃんはその笑みを曇らせると…
「…翔太、」
「うん?」
「あの…」
「?」
何かを言いかけていたけれど、やがて誤魔化すように「帰ろっか」ってやっといつもの笑顔を浮かばせた。
「…そだね」
「外に出れるっていいなぁーっ」
「…」
その時…僕に背を向けた世奈ちゃんが、
自身の唇をこっそり手の甲で拭っていたのを、僕は知らない。