兄貴がイケメンすぎる件

そう思っていたら、兄貴がまたあたしに言った。




「いや、別に止めたりせぇへんよ」

「え、」

「まぁ…ええんちゃう?人生に一回くらいこんなことがあっても」



兄貴の意外な言葉に、少しだけあたしの心が軽くなる。


…嘘。あたしはてっきり止められるかと思ってた。

頬を殴られるくらいの覚悟だって出来てたのに。


…だけど、そう思っていたのも束の間。


兄貴は次の瞬間厳しい言葉を口にした。



「…ただな、世奈」

「?」

「出て行ってもええけど、もう絶対帰って来んなよ」

「!」

「後で“やっぱ帰る”言うても俺は知らんからな」



兄貴はそう言うと、今度は厳しい表情であたしを見た。

その言葉と表情に、あたしは一瞬ビビって怖くなってしまったけど…



「っ…ごめんなさいっ、」

「!」



あたしはやっぱり翔太が大切だから、兄貴にそれだけを言うと走ってその場を後にした。


……でも、兄貴はそんなあたしを珍しく止めたりしない。



翔太を兄貴に会わせたくないから。

翔太と別れたくないから。



あたしは、12回目の失恋を恐れて、



一番大好きな人の元へと急いだ。


< 214 / 386 >

この作品をシェア

pagetop