兄貴がイケメンすぎる件
そう思っていたら、兄貴がまたあたしに言った。
「いや、別に止めたりせぇへんよ」
「え、」
「まぁ…ええんちゃう?人生に一回くらいこんなことがあっても」
兄貴の意外な言葉に、少しだけあたしの心が軽くなる。
…嘘。あたしはてっきり止められるかと思ってた。
頬を殴られるくらいの覚悟だって出来てたのに。
…だけど、そう思っていたのも束の間。
兄貴は次の瞬間厳しい言葉を口にした。
「…ただな、世奈」
「?」
「出て行ってもええけど、もう絶対帰って来んなよ」
「!」
「後で“やっぱ帰る”言うても俺は知らんからな」
兄貴はそう言うと、今度は厳しい表情であたしを見た。
その言葉と表情に、あたしは一瞬ビビって怖くなってしまったけど…
「っ…ごめんなさいっ、」
「!」
あたしはやっぱり翔太が大切だから、兄貴にそれだけを言うと走ってその場を後にした。
……でも、兄貴はそんなあたしを珍しく止めたりしない。
翔太を兄貴に会わせたくないから。
翔太と別れたくないから。
あたしは、12回目の失恋を恐れて、
一番大好きな人の元へと急いだ。