兄貴がイケメンすぎる件
それからは、新婚気分で翔太と毎日を過ごした。
一緒にスイーツを作ったり、
晩ごはんを一緒に作ったり、
テスト勉強を一緒にやったり(でも二人とも勉強は×)、
あたしとしてはそれがこれまでにない幸せで、「こんな日がずっと続けばいいな」と思ってた。
だって凄く幸せだし、例え学校で何か嫌なことがあっても、翔太と一緒にいるだけでそれが全部吹っ飛んでしまう。
そして、そんな幸せを感じていたある日。
翔太の家に来て一週間が経った頃。
あたしが学校の中庭で独り携帯を弄っていると、その時ふいに誰かに声をかけられた。
「世奈」
「!」
物凄く聞き覚えのある声に、思わず心臓がドキッと跳ね上がる。
まさか健がここに来るなんて思ってもみなくて、話しかけられるとも思っていなかったあたしは、ぎこちなく「な、なに」って返事をした。
すると、そんなあたしを見た健が、あたしのすぐ隣に腰を下ろして言った。
「…勇斗くんから聞いた。駆け落ちしたんだって?アイツと」
「!!」
その言葉に、あたしはびっくりして健から逃げようとすぐにそこから立ち上がる。
でも、そんなあたしを健が簡単に逃がしてくれるわけなんかなくて、健はあたしの腕を素早く掴むとあたしをまたそのベンチに座らせた。
「待てよ、まだ話終わってないだろ」
「!」
「お前さ、本気でこのままアイツのとこにいるつもり?」
健はあたしにそう問いかけると、真剣な表情であたしの目をじっと見つめる。
その視線にあたしはうつ向いたまま………この前倉庫に閉じ込められた時のことを思い出して、思わず目を泳がせる。
なんで…なんで健は平気なの、
そう思いながら、あたしが開いていた携帯を閉じて「健には関係ないでしょ」って可愛くないことを言えば、
健は次の瞬間低い声であたしに言った。