兄貴がイケメンすぎる件
その優しい表情を目にした瞬間、あたしは「でも…」とまた健から目を背ける。
…でも、それでも不安だ。
兄貴にはどんなに怒られたって構わないけど、
兄貴と会った時の翔太がどんな反応を見せるのかが一番怖い。
「や、でもあたし…」
あたしが不安いっぱいで俯くと、健があたしの頭に手をやって、それを優しく撫でながら言った。
「好きなんだろ?早月翔太が。だったら信じてやれよ、」
「…」
「大丈夫だって。もしアイツが勇斗くんを見てお前と“別れる”とか言い出しても、俺も一緒にアイツを説得してやるからさ、“別れんな”って」
「!」
健はそう言うと、しばらくそのままあたしの頭を優しく撫でてくれる。
…あぁ、どうしてあたしは健にそんなことを言わせてるんだろう。
健だって絶対に辛いし、本当はこんなこと言いたくないはずなのに。
あたし…サイテーだ、
この前の告白のことを思い出すと、尚更。
だけどあたしはその時、ふいに告白以外のことも思い出してしまって…
それでも慌てて首を横に振ると、やっと決心をして言った。
「…わかった」
「え、」
「駆け落ちはやめて、兄貴に素直に謝るよ」
「!」
「で、翔太を紹介しに行く」
あたしがそう言うと、健はあたしの頭から自身の手をスッと離した。
そしてちょっと黙った後、また少しだけ微笑んで安心したような顔をして見せる。
「…それ、信じていいの?」
そんな健の言葉に、あたしは再度頷いて言った。
「うん。
兄貴に、翔太を会わせてみるよ」