兄貴がイケメンすぎる件

翔太は悪戯顔でそう言うと、次の瞬間ぎゅうっと正面からあたしを抱きしめてくる。

腕の力が強すぎて少し痛かったけれど、それさえも今は何故か心地よく感じて。



「…翔太っ…」

「んー?」

「どうしよ、嬉しすぎて泣きそー」



あたしも翔太の背中に腕を回したら、その瞬間それを見ていた健がため息交じりに言った。



「……ほんとバカップルだよな、お前ら」

「!!…っ」



その声に、あたしは思わずビクッと体を震わせる。


そうだ、嬉しすぎて忘れてた。

そういえば、まだ健がここにいたんだった!


そう思うと健に見られていることが恥ずかしくてあたしが翔太から離れようとしたら、別に気にしていない様子の翔太が言った。



「だめー、離さないの」

「!」



そう言って甘えられて、もう離してくれない。



「ちょ、ちょっと待って翔太!そういうのは、二人きりになってからで…!」

「えぇー何で?いいじゃん、今日はほとんど世奈ちゃんに触ってなかったんだし、」

「いやでもっ…」

「え、嫌なの?」

「!…っ」



しかしあたしがまだ恥ずかしがっていると、ふいに翔太がそう問いかけて寂しそうな顔をする。


…もう、ずるいよ。

そんな顔されたら、全部許しちゃうじゃん。

ほんとは、全然嫌じゃないから。



「んーん。嫌じゃない、むしろ嬉しいけど…」

「…」

「…二人きりの時に、ゆっくり…がいい」

「!!」

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