兄貴がイケメンすぎる件
あたしがそう言って顔を真っ赤にすると、翔太はふとあたしを抱きしめる腕を離して、言った。
「世奈ちゃん…」
「?」
「わかったよ。じゃあ世奈ちゃんの言う通り、近いうちにちゃんと時間作るから、その時にゆっくり…」
「…ゆ、ゆっくり…」
「…(付き合ってらんねー)」
そしてあたし達がそう言って二人だけで言葉を交わしていると、やがてその時健が先に帰る支度をして、体育館を出ようとする。
ここの鍵を持っているのは健だから、あたし達がうかうかしていると、体育館の入り口で健が言った。
「お前ら、早く帰るよ。置いてくぞー」
「あ、待って!」
そんな健の言葉を聞くと、あたし達は慌てて帰り支度をする。
翔太が二階に忘れ物をしたらしく、独り先に体育館の入り口まで来たらそこにいる健があたしに言った。
「…良かったな、元に戻って」
「!」
その言葉に、あたしはふと健を見る。
…そうだ。これも、健のおかげなんだよね。
健だって、凄く辛い思いしたのに…きっと。
あたしはそう思うと、慌てて健に言う。
「あ、あのっ…ありがとね、健!いろいろ、してくれて」
「…」
「健には、凄く感謝してる。いくら感謝しても足りないくらい。ほんと、ありがとう」
あたしは珍しく素直にそう言って、健に向かって頭を下げる。
だって健がここまでしてくれなかったら、きっとあたしは今頃独りでマンションで泣いていたから。