兄貴がイケメンすぎる件

あたしがそう思いながら少しの間頭を下げていたら、ふと健があたしに言った。



「頭上げて、世奈」

「…?」



そう言われて、あたしは言われるままにゆっくり頭を上げる。

何を言われるのかと思っていたら、健がまだ体育館内にいる翔太に言った。



「早月ー、ついでに電気も消してきてー」

「えぇー。無理ー!」

「よろしくー」



そしてそれだけを言うと、ふいにまたあたしに向き直って言う。



「…ほんとは、早月に持って行かれるとかすげー悔しいけどさ、」

「?」

「幸せんなれよ。ここまでしてやったんだから」



健はそう言うと、あたしに向かって優しく微笑んだ。

…ごめんね、健。ありがとう。


でも、そう思っていたら…



「…!!」



体育館の電気が消えた、その瞬間…

健が、真正面からあたしを抱きしめてきた。



「健っ…!?」

「ごめん、これで最後にする。最後にするから…」

「…、」

「せめて早月が戻ってくるまで、このままでいさせて」

「……」



…少し、ビックリしてしまったけれど…そんな健の言葉に、あたしの体は動かない。

強く強く抱きしめる健の腕があまりにも切なくて、あたしはそれ以上なにも言葉には出来なかった。


そして、翔太が戻ってくる頃…


健がぱっとあたしから離れて、その時翔太が真っ暗の体育館内から顔を出した。



「おまたせ。じゃあ、帰ろ」

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