兄貴がイケメンすぎる件
…物凄く聞き覚えのある声。
その声に嫌な予感を感じながらも振り向くと、そこには今日初めて会ったばかりの早月くんがいた。
そいつは買い物にでも行っていたのか、片手に小さな買い物袋を持っている。
…ってか、私服。可愛いな。
パーカーにジャージのズボンだけど、パーカーには可愛らしいキャラクターが描かれてある。
「…さ、早月くん」
あたしがそいつの突然の登場に少し驚いていると、早月くんは「翔太って呼んでくれても構わないよ」って言う。
まーたそんなことを言うんだから。でもあたしは騙されないからね。
そう言いかけたけど、ふいにあたしの視線がそいつの持っている買い物袋に行って、何気なく聞いてみた。
「…ねぇ」
「?」
「もしかしてそれ、晩ごはん?」
あたしがそう聞くと、早月翔太は「そうだよ」と顔色1つ変えずに頷いた。
どうやら早月くんはコンビニに晩ごはんを買いに行って、今はその帰りらしい。
親の人がいないのかな?
そう疑問に思ったけど、「別にそんなことはどうでもいいか」と敢えて聞かなかった。
「…じゃ、またね」
これ以上話して、いつの間にか仲良くなって、騙されちゃ困る。
そう思って素っ気ない態度でその場を後にしようとしたら、それをまた早月くんに留められた。
「あ、待って世奈ちゃん!」