兄貴がイケメンすぎる件


…物凄く聞き覚えのある声。


その声に嫌な予感を感じながらも振り向くと、そこには今日初めて会ったばかりの早月くんがいた。

そいつは買い物にでも行っていたのか、片手に小さな買い物袋を持っている。

…ってか、私服。可愛いな。

パーカーにジャージのズボンだけど、パーカーには可愛らしいキャラクターが描かれてある。



「…さ、早月くん」



あたしがそいつの突然の登場に少し驚いていると、早月くんは「翔太って呼んでくれても構わないよ」って言う。


まーたそんなことを言うんだから。でもあたしは騙されないからね。


そう言いかけたけど、ふいにあたしの視線がそいつの持っている買い物袋に行って、何気なく聞いてみた。



「…ねぇ」

「?」

「もしかしてそれ、晩ごはん?」



あたしがそう聞くと、早月翔太は「そうだよ」と顔色1つ変えずに頷いた。

どうやら早月くんはコンビニに晩ごはんを買いに行って、今はその帰りらしい。


親の人がいないのかな?


そう疑問に思ったけど、「別にそんなことはどうでもいいか」と敢えて聞かなかった。



「…じゃ、またね」



これ以上話して、いつの間にか仲良くなって、騙されちゃ困る。


そう思って素っ気ない態度でその場を後にしようとしたら、それをまた早月くんに留められた。



「あ、待って世奈ちゃん!」


< 33 / 386 >

この作品をシェア

pagetop