兄貴がイケメンすぎる件
何だよもう、急いでるのに!
僕がそう思いながら、ジロ、と相沢さんを睨むとそいつが何かを言いかけた。
「ちょうど良かった。お前に話があるんだけどさ、せ…」
……だけど。
どんどん小さくなっていく世奈ちゃんの背中を見た僕は、呑気に話してる場合じゃない!と相沢さんの言葉を遮って言う。
「っ、その話また今度にして!今は時間がないから!」
「え、おいっ…!?」
そして僕はすぐさまそいつに背中を向けると、慌てて彼女の背中を追いかけた。
…早く行かなきゃ。
見失ったら大変だ。
しかしその一方で、そんな僕の背中を眺めながら、相沢さんがそっと呟いた言葉を…僕は知らない。
「……世奈が怪しいバイトしてんぞー」
それをちゃんと聞いていれば…傷つかなくて済んだかもしれないのに…。
その後結局世奈ちゃんを完全に尾行した僕は、目撃してしまったんだ。
世奈ちゃんが、お洒落な格好で年上の男とどこかの店に入っていく姿を……。
それを見て、呆然と立ち尽くす僕の向こうで…世奈ちゃんは楽しそうに笑ってた。
………嘘じゃ、ない。
世奈ちゃんは浮気してる……。