兄貴がイケメンすぎる件

向かった先は、同じ階にある誰もいない空き教室。

翔太はそこにたどり着くなり、ガラ、とドアを開けると、その中へあたしを先に入らせる。

…翔太の様子がいつもと違う。

なんか、怒ってる。


あたしはそう思うと、いてもたってもいられなくて翔太に言った。



「ね、ねぇ、どうしたの?何で怒ってるの?」

「…」

「何か今日の翔太怖いよ…」



しかし…あたしがそう言ってうつ向くと、翔太はそんなことに構わずに、半ば乱暴に空き教室の出入口のドアを閉めた。



「…っ!」



その音にあたしが、ビク、と肩を震わせて反応すると…翔太があたしの方に歩み寄りながら言う。



「昨日の放課後、誰と何してたの?」

「…え?」

「正直に答えて。僕とのデートを断って、何してたの?世奈ちゃんは」



翔太はそう問いかけながら、その言葉に思わず目を泳がせるあたしの目の前まで来る。

…空気が張りつめる。いつもの翔太じゃないみたいで、怖い。

そして、上から見下ろされているその何とも言えない視線が怖くて、あたしは翔太を見れないまま口を開いた。


………バイトのことは、言えない。



「……ちょっと、用事があって…出掛けてた」

「誰と?」

「そ、それは…」



その言葉に、あたしはどう言っていいのかわからなくて、黙り込む。


…昨日はバイトのために、あたしは知らない男の人と二人でいた。

もしかして、それを誰かにたまたま目撃されて…翔太の耳に入ってしまったのかな…。


あたしがそう思いながら黙っていると、やがて翔太が言った。



「…言えないような相手と一緒だったんだ?」

「!」

「浮気でもしてたのかな」
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