兄貴がイケメンすぎる件

「!!ちがっ……」



その思わぬ一言に、あたしは慌てて「違う」と言いかけて顔を上げる。

あたしは翔太が一番で、翔太のことだけが好きだから、浮気なんてありえない。

だけど…そう言いかけて顔を上げた瞬間、目に飛び込んできたのは、翔太の凄く悲しそうな顔。

その顔を間近で見た瞬間、あたしは思わず言葉を詰まらせた。



「……っ」



…翔太…?

そして、そんな翔太を目の前にしてあたしがまた言葉を失っていると、その間に翔太が言う。



「…昨日、見たんだ。世奈ちゃんが、すんごいお洒落して、男と一緒にいるところ」

「!」

「ずいぶん楽しそうにしてたじゃん。ああいう笑顔、僕にもあんまり見せたことないよね」

「…っ、」

「…もしかして、あの男が世奈ちゃんの本命だったり…するの?」

「!!」



翔太はそう問いかけると、悲しそうな顔をしたままあたしを見つめる。

…さっきの、怒ったような顔とは全然違う表情。

その表情と言葉に、あたしはビックリしてまた顔を上げて。

泣きそうになりながら、翔太に言った。


だってその言葉って、あたしの気持ちが普段翔太にちゃんと伝わってない証拠だよね?



「っ、な、何でそうなるの!?あたしは翔太のことだけが好きなんだよ!」

「けど、昨日の世奈ちゃんは僕の知らない世奈ちゃんだったよ。ずいぶんカワイー格好してたよね?」

「可愛い格好でも、あたしが一番好きで一番一緒にいたいのは翔太だもん!他の人じゃ、」



意味ない!


しかし…あたしがそう言いかけると、それを遮るように翔太が言った。



「だったらあの男誰なんだよ!!」

「!!」

「そこまで言うなら浮気じゃない証拠見せろよ!!」

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