兄貴がイケメンすぎる件
「……っ」
そう言って、いつになく声を張り上げる。
ここまで怒ってる翔太は、見たことない。
翔太が怒っていれば怒っているほど、あたしのせいでどれくらい傷ついたのかが伝わってきて…。
だけどそんな翔太に、あたしは呟くように言った。
「…証拠は……ない、けど」
「…」
「っ…でも、浮気とかじゃないの!あの男の人とはただ他愛のない話…雑談してただけ!本当にただそれだけなの!」
「…」
「…本命とか、そういうわけじゃない。ただ会って話してただけの赤の他人だよ。翔太の考えてるようなことは何もない、」
あたしはそう言うと、信じてほしくて必死に翔太を見つめる。
…確かに逆の立場だったら嫌だけど、翔太の誕生日になったらちゃんとバイトだったんだって話すから…。
……しかし。
そう思いながら、あたしが翔太の返事を待っていると…
「……じゃあ何で世奈ちゃんは、他の男と二人で会う前にそれを僕に言わないの」
「!」
やがて翔太がゆっくり口を開いて、あたしにそう言った。
また、悲しそうな顔をして。
あたしがそんな翔太から目を逸らせないでいると、翔太が言葉を続けて言う。
「何もない人と会うなら、本当にやましいことがない相手なら一言僕に言うべきなんじゃないの?
大丈夫だとか思ってたの?バレないとか思ってた?
世奈ちゃんの彼氏は僕なんだよ。でも言わなかったし、あんなにお洒落までして二人きりで会うってことは、そういうことなんでしょ」
「……っ、」
翔太はそう言うと、悲しそうな目をしたまま…あたしから視線をそらして、うつ向く。
そんな翔太の様子に、あたしはビックリしつつ、申し訳なく思いながら…思わずこの際バイトのことを話してしまおうか、と口を開いて…。
……だけど、ダメだ。今バイトのことを話してしまえば、サプライズで渡すはずの誕生日プレゼントのことも即バレてしまう。
だったら何て言おうか…。
あたしが必死に頭の中で考えていたら、そのうち沈黙に耐えられなくなったらしい翔太が言った。
「……否定できないんじゃん」
「!」
「じゃあもう、要らないんだ。僕は」