兄貴がイケメンすぎる件
と、吐き捨てるようにそう言って、空き教室を後にしようとする。
けど、あたしはその「要らない」の言葉に即座に反応して、出て行こうとするその翔太の右腕を両手で掴んだ。
「待って!」
「…」
「要らないなんて言わないで!あたしは翔太がいなきゃっ…」
しかし、そう言って必死に引き留めるも…
「じゃあ、もう金輪際あの男と二人きりで会わないって約束してくれる?」
「!」
翔太があたしの方をまた振り向いて、そんなことを問いかけてきた。
…けど、あたしはその言葉に「それは…」と戸惑ってしまう。
今日の放課後だって、バイトとしてまた同じ人と会う約束をしているのだから、その翔太の言葉には頷けない。
しかしあたしがウカウカしていると、翔太があたしの両手を振り払った。
「…っ」
「あっ…翔太!」
待って!やだ、行かないで!
あたしはそんな翔太の後ろ姿に物凄く嫌な予感を感じると、何がなんでも引き留めようとする。
誕生日が来たらわかるから。
全部納得できるから。だから今は…!
しかしそう思いながらまた翔太の右腕を掴むと、その時翔太が背中越しにあたしに言った。
「……離せよ。もう信じてんの、無理」
「…っ」
「僕と別れて。バイバイ」
「!」
そう言って、目の前で…勢いよくドアを閉められてしまう。
「やだっ…翔太ぁっ…!」
突然冷たく遮られた姿に、あたしはこれ以上追いかけるような勇気すらなくて…その瞬間涙が溢れだす。
目の前のドアに頭を預けて、ずずず…と床に情けなく座り込んだ。
…嘘でしょ?
これで終わりなの?本当に、今終わっちゃったの?
「っ…しょ、た…翔太…翔太ぁっ…」
…何で、こんなことになってしまったんだろう。
だけど、今更悔やんだってもう遅い。
あたしは独りぼっちになった教室で、バカみたいに翔太の名前を呼びながら泣いた。
こんなに好きなのに…ただ好きで、喜んでほしいだけ…なのに、
何で別れなきゃいけないの………。