兄貴がイケメンすぎる件
…そんな思ってもみない情報を突然耳にした直後、さすがに僕は黙っていられなくて、顔を相沢さんに向ける。
…怪しい…バイト?世奈ちゃんが?
そしたらすぐに相沢さんと目が合って、そいつが言葉を続けて言った。
「…本当は世奈に口止めされてたんだけどさ、アイツたまに本気で危なっかしいことするじゃん。
世奈、お前の誕生日に良いプレゼント買ってやりたくて、金貯めてんだよ」
「…は、いや、ちょ、待っ……何それ」
「いや、何それじゃなくて。世奈が、お前の誕生日プレゼントの金稼ぐために男と二人で会うとかすげー怪しいバイトしてるっつーんだよ」
「!!」
はぁ!?
僕は相沢さんが言っている言葉の意味をやっと理解すると、思わず猫背の背中を伸ばして身を乗り出した。
そして、今朝の世奈ちゃんとのやり取りを思い返しながら…相沢さんに言う。
もしかして、昨日の放課後見たアレが……関係してる、とか?
「なっ…何だよそれ!初耳なんだけど!」
「…そりゃあお前には絶対秘密だったからな」
「っつか、秘密も何も怪しいバイトって……何でそういうことをもっと早く僕に言わないんだよ!」
「言おうとしたら昨日お前が“時間ない”とか言って帰ってったんじゃねーか」
「!」
相沢さんは僕の言葉にそう言うと、ジロ、と僕を横目で見遣る。
その言葉に、僕はまた更に思い出した。相沢さんが言う昨日の放課後の会話を。
……ああ、本当だ。確かにそういうやり取り、してたな。
僕はそれを思い出すと、また「…はぁ」とため息を吐く。
でも…今はため息なんか吐いてる場合じゃない!
世奈ちゃんは、危ないこととはいえ…僕のためにやっていたこと、だったのに。
僕はそう思うと、相沢さんに言った。
「っ、世奈ちゃん今日もバイト!?」
「え、さぁ…それは知らん」
…くそ、どっちだろう。
だけど今は、迷ってるヒマはない。
僕はすぐに立ち上がると、相沢さんに言った。
「今すぐ世奈ちゃん迎えに行く」
「おー」
「バイトのこと、教えてくれてありがとう」
「…おー」
僕はそれだけを言うと、即座に屋上を後にした。
……けど、変だな。バイトならもっと他にも安全なバイト、いっぱいあるのに。
どうしてわざわざそんな危ないバイトを選んだり…
しかし僕はそう考えると、すぐに怪しい人物が頭の中に浮かび上がった。
…結菜だ!