兄貴がイケメンすぎる件
男の人はそう言うと、「寂しいじゃん」とあたしの手を握る。
「…!」
手に触れられたことに少しだけビックリしたけれど、あまり気にはせずにあたしは「じゃあ…」とその言葉に頷いた。
次はどこに行きますか、と。
まぁ、確かに最後だしね。バイトだし、翔太のこともあるから本当に少しだけ。
でも、あたしが頷くと…男の人がある建物を指さして言った。
「あそことか良くない?」
「!」
その言葉に、あたしは指の先を辿ってそこを見る。
………ホテル?
あたしはそれに気がつくと、言った。
「あ…レストラン、とか…ですか?だったら…」
「いや、違うよ。部屋をとるんだよ」
「……え」
あたしは少し嫌な予感を感じつつそう言ってみたけれど、男の人はあたしの予想通りにそう言ってニッコリ笑う。
でも、あたしはその言葉に一瞬にして体中を強張らせた。
足が固まって…額にヒヤリ、と冷や汗が伝う。
「……部屋を、とる?」
「うん、そうだよ。時間はたっぷりあるしね」
「でもあたし、そういうつもりで来たわけじゃ…」
しかし、あたしがそう言って断ろうとすると、男の人が言った。
「“そういうつもり”?何言ってるの、世奈ちゃんはバイトだから僕とこうやって一緒にいるんでしょ?」
「それは……そうですけど」
「このバイトはこういうバイトなんだよ。だから拒否するのはおかしいよ」
「!!」
男の人はそう言うと、あたしの手を半ば強引に掴んで、そこへ無理矢理に連れていこうとする。
けど、いきなりそう言われても、簡単にホイホイついていけるわけがない。
このバイトが本来そういうことだったとは全く知らなかったあたしは、ホテルには行きたくないと必死で抵抗を試みた。
「あっ…あたしはもう今日で終わりなので!帰ります!」
「最後だから、でしょ。まだ何もしてないのにそれはないんじゃないかなぁ」
「でも、そんなこと聞いてなかったんで!」
「聞いてなくても、このバイトがしたいって言ったのは世奈ちゃんじゃん。お金、欲しいんでしょ?」