兄貴がイケメンすぎる件

翔太はそう言うと、真剣な表情であたしを見つめる。

その翔太の言葉や表情に、あたしは上げていた顔をゆっくりうつ向かせた。



「…ごめん」



…そう、だよね。翔太の言う通り。

最初から完全に信用してたわけじゃないけど、バイトが決まる前の健の言葉や、結菜さんに会う前の翔太の言葉をよく考えれば、すぐに疑うことの出来る話だった。

あれだけ翔太に「結菜には気をつけて」等言われていたのに、あたしは何やってたんだろう…。

そう思いながらあたしが反省していたら、また翔太が言った。



「…なんとかこうやって間に合ったからいいけど、間に合わなかったらどうするつもりだったの?」

「…」

「誕生日プレゼントのため?でも、僕は嫌だよ。世奈ちゃんがあのまま僕の知らないところで傷つくなんてさ、」



翔太はそう言うと、うつ向いたままのあたしに向かって、悲しい顔を浮かべる。

けど…



「…!」



…その時。

ふいに突然、真正面から抱きしめられて、ぎゅっとされながら翔太に言われた。



「…でも、世奈ちゃんが無事で良かった」

「!」

「ほんと良かった…」



そう言われると同時に、より強く抱きしめられる。

腕の力が強すぎて、痛いくらいだけど今は安心感が勝っていて、これくらいがちょうどいい。

翔太が心からホッとしてくれているのが、あたしにも伝わってきて…

だからあたしも翔太の背中に両腕を回すと、そのうち安心感からか思わず涙が溢れてきた。



「ごめん。ほんと、ごめんなさいっ…」



そう言いながら、あたしはさっき感じた恐怖のこともあってか、思わず翔太の腕の中で泣きじゃくる。

その間に、翔太はあたしの頭をずっと優しくぽんぽんしてくれて…あたしには翔太が必要だ、と改めて感じることができた。


翔太、ありがとう…。

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