兄貴がイケメンすぎる件




……………

……………



それから落ち着いたあと、あたしは翔太に連れられて兄貴がいるマンションに真っ直ぐ送ってもらった。

その途中、翔太から聞いた話だと、結菜さんはやっぱり本当はあたしと翔太のことを内心良く思っていなかったらしく、わざと変なバイトを紹介したらしい。

だけど結菜さんがこういうことをするのは珍しいことじゃなくて、あたしは再度翔太に「気をつけてね」と念を押された。

僕が何回何を言っても、アイツは言うことを聞かないから、と。


そして…



「僕は別に、ゲーム機が欲しかったわけじゃないんだよ」

「え、そうなの!?」



マンションに到着する直前、ずっと勘違いしたままのあたしに翔太がそう言った。

誕生日プレゼントにゲーム機を買おうとしていたあたしに、翔太が否定するようにそう言ったのだ。

だけど、てっきり翔太がゲーム機を欲しがっているとばかり思っていたあたしは、そのまさかの言葉に思わず目を丸くする。


うっそぉ!?


でも、



「っ、え、でもさ、二人でおもちゃ屋さんに行った時、翔太すんごい物欲しそうにゲーム機見てたじゃん!」



…そう。決めつけ始めた決定的な理由がこれ。

だからあたしは、バイトを始めたのに。

だけどあたしがそう言うと、翔太が言う。



「あ、ああ。あれは…違うんだよ」

「?」

「あれは……この前相沢さんと二人で遊んだ時、相沢さんが、“昨日突然親がゲーム機買ってきてくれた”とか言うから…羨ましくて」

「!」



ほら、僕の親はずっと海外にいるからさ。


翔太はそう言うと、「勘違いさせてごめんね」と苦笑いを浮かべる。


…な、なんだ。そういうことだったのか。

っていうか、翔太と健って二人で遊んだり…するんだ。意外。


その真実を聞いたあたしはそう思うと、やっとその翔太の言葉に納得した。

確かに、翔太は親に何かを買って貰うなんてこと…ないもんね。ずっと独り暮らしだし。

あたしはそう思うと、翔太に言う。



「………でも確かに羨ましいね、健。誕生日でもないのに親が突然ゲーム機買ってくるなんて」

「でしょ!?」

「ってか、じゃあ翔太は誕生日に何が欲しいの?遠慮なくなんでも言ってよ。頑張って用意するから」



……だっていつも、翔太はあたしのことを優先してくれてるんだから。

誕生日くらい、あたしが翔太を優先してあげたい。


しかし、あたしがそう思いながらそう言うと、翔太が言った。



「え、欲しいもの?……別にないな」

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