兄貴がイケメンすぎる件
【おまけ④】




「ひざまくらをしてみたい」


昼休みの階段。

二人きりの空間で、お弁当を食べ終えたあと。

二人で他愛のない話をしていたら、ふいに世奈ちゃんがそんなことを言い出した。

屋上に繋がる階段。

人が滅多に通らないこの場所は、僕と世奈ちゃんの最近の秘密の場所で。

僕はそんな思いもよらない世奈ちゃんの言葉に、目をぱちくりとさせた。


「…どしたのいきなり」


なんだか世奈ちゃんらしくないね、と。

だってそりゃそうだ。

世奈ちゃんは自分からこんなふうに、僕にわかりやすく甘えてはこない。

だけど今日の世奈ちゃんは、何故か違って。

その顔は少し、甘えている。

だから僕はそんな世奈ちゃんが何だか一段と可愛く感じて、言った。


「いいよ。じゃあおいで。ほら、」


そう言って、自分の膝をぽんぽん、と軽く叩く。

心地いい膝かどうかはわからないけど、世奈ちゃんがしたいって言うなら。

だけど世奈ちゃんは小さく首を横に振ると、そんな僕に言う。


「…違うの。そうじゃなくて」

「え、」

「あたしが、翔太にひざまくらをしたいの」


世奈ちゃんはそう言うと、またもや目をぱちくりとさせる僕に向かって、自身の膝をぽんぽん叩く。

ここにおいで、と。

その言葉で、僕はようやく気がついた。

いま僕は世奈ちゃんに甘えられてるんじゃなくて、「甘えられたい」って思われてるんだ、と。
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