兄貴がイケメンすぎる件

世奈はそう言うと、本当に不満そうな、寂しそうな顔をする。彼女はあたしだよ、と。

けど一方、そんな世奈の不満を聞いた俺は、心当たりありまくりで…っつか、心当たりしかなくて、思わずいつも通りには…いられなかった。


「…ふっ…くくっ…」

「…ん…健?」

「おまっ、それ…んははっ、」

「!…ちょっと、人が真剣にっ…ってか何で笑ってんの!」


思わず俺が笑いを堪えられないでいると、そんな俺を見た世奈はめちゃくちゃ不満そうにそう言って、俺の肩を叩く。

痛い。けど、世奈には悪いけどこれは可笑しすぎる。あ、っつか、言ってなかった俺が悪いのか。

俺はそう思うと、やがて落ち着いたあと世奈に言った。


「っ……あのさ、それ、違うから」

「え?…違うって何が」

「だから、早月が先約入れた相手は、俺」

「…え!?」

「明日は野郎二人で夏祭りに行くんだよ。安心しろ。浮気とかじゃないから!」


俺が尚も少し笑いながらそう言うと、一方の世奈は予想外の事実に、自身の口をぽかん、と開ける。

ほんと滑稽な奴だよな。まぁ、そういうところも、好きだったわけだけど。

でも、俺の言葉に世奈はその後安堵した表情をしたけれど、すぐに首を横に振って言った。


「じゃ、じゃあ…それなら何で健はこの前ここでそう言ってくれなかったの!?」

「…この前?」

「ほら…健が、あたしに聞いてきたじゃん。夏祭り誰と行くかって。その時に言ってくれてもよかったじゃん。
それにあの時、あたし翔太と行く気満々だったし」

「…あー」


…そうなんだよな。
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