兄貴がイケメンすぎる件
「何ってクッキーだよ。夕べ一生懸命焼いたの。食べて」
早月翔太は語尾にハートマークがつきそうな口調でそう言うと、ニッコリと爽やかな笑顔を浮かべる。
「え、ってか、あんたが焼いたの!?」
あたしがびっくりしてそう聞くと、早月翔太は「うん、僕が独りで焼いたの」って言う。
そんな早月翔太に、周りの女子達が羨ましそうに言った。
「えぇ~。工藤さん良いなぁ。翔太くん、あたしにもクッキー焼いてぇ」
「工藤さんだけずるーい」
そう言って、早月翔太の腕に自身の腕を絡ませる。
その姿を見て、あたしはふと思い出す…。
そう言えば、あたしも貴斗くんに腕を絡ませたりして…。
『ねぇ、遊園地行きたい』
『えー、でも混んでそうだし』
『いいじゃん、行こうよー』
『…しょうがないなぁ』
…そんなワガママを言ってたっけ…。
独りそんな懐かしい過去を思い出してぼーっとしていると、それに気がついた早月翔太があたしに言った。
「…世奈ちゃん?」
「!…え、」
「どうしたの?」
その問いかけに、なんとかして誤魔化そうと口を開いたら、それを遮るようにまた早月翔太が言った。
「ね、せっかく焼いたんだから食べてみてよ」