兄貴がイケメンすぎる件
「だって…アイツに一目惚れしたって言われたのはあたしだし…」
それでも、あたしは怯むことなくそう言い返した。
そう。完全なる証拠がそれ。
あたしは確かにみんなの前で早月翔太に「一目惚れした!僕と付き合って!」って言われたし。
この先輩達はその一部始終を見ていなかったんだろうか?
あー、ムカつく。
そんなことを考えていたら、目の前にいるいかにもギャル系な先輩が、突然あたしを突き飛ばしてきた。
「調子のってんじゃねーよ!」
「!!」
「あんたさ、噂によるとつい最近まで彼氏いたらしいじゃん。別れたからって翔太くんに乗り換えるつもり?
ふざけんなよ!」
「…」
「もう二度と翔太くんに近づかないで。じゃなきゃアンタのヤバイ噂学校中に撒き散らしちゃうから」
先輩はわざとらしく語尾にハートマークをつけてそう言うと、不気味に笑って他の仲間達と一緒にその場を後にした。
…何だよ、ヤバイ噂って。
ってか早月翔太とは隣同士だし、近づかないわけにはいかないっつーの。
あたしはそう思いながらその場から立ち上がると、制服についた埃を手で払った。
…貴斗くんは、こんな時すぐ助けに来てくれたのに。
もう、誰も来ないんだ…。