兄貴がイケメンすぎる件
「え、何それ聞いてないけど!?」
あたしがびっくりしてそう言うと、兄貴はフライパンに油をひきながら言う。
「せやから、今言うたんやん」
「…だって、泊まりって…」
昨日アイツに告られたばっかなのに、それはキツいよ…。
兄貴の言葉に一気にテンションが下がったあたしに、兄貴がからかうようにして言った。
「え、何や。泊まりに来てほしない理由でもあんのか、」
「!」
そう言って、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべてあたしを見遣る兄貴。
あたしがそんな兄貴に何かを言い返そうとしたら、その瞬間にとうとうアイツがやって来た。
「お邪魔しまーす」
「!!」
「あ、ほら噂をすれば。世奈チャン、お出迎えに行ってやり?」
兄貴はそう言って、今度はわざとらしい笑みであたしを見る。
そんな兄貴に、「絶対行かない!」と言おうとしたけど、突如両肩を掴まれ、玄関の方へと半ば無理矢理に方向転換させられた。
「お客様をお出迎えするのは、常識やで。あ、笑顔忘れずにな」
「……」
「返事は?」
「…はい」
…それは兄貴が働くカフェの基本じゃん。
心の中でそう思いながらも、あたしはこれ以上は何も言えなくなって、素直に玄関に向かった。
あー、気まずい。気まずすぎる。
「…健」
そして、健がいる玄関に着くなり、あたしは目を合わさずにぶっきらぼうに言った。
「…おかえりなさい」