兄貴がイケメンすぎる件
あたしがそう言うと、健は一瞬戸惑った様子であたしを見ていたけど、やがて「ただいま」って返事をした。
…変なの。
いつもだったらシカトするか、「うるせーよ」とかで終わるのに。
何か、調子狂うじゃん。
「っつかイイ匂いすんね。ハラ減ってきた、」
健はリビングに向かいながらそう言うとと、「今日何?」と問いかけてあたしを見る。
「……唐揚げ」
だけど、あたしはいつまで経っても可愛くなれなくて。
優しくなった健の前で、怒ったような、不満げな返答しか出来ない。
…ってか、どういうふうに接したらいいの…。
複雑な気持ちで健の背中を見つめていたら、やがて二人でリビングに入った。
「おかえり、健」
「勇斗くんただいま」
そして、部活で疲れているだろう健に、兄貴が言った。
「あ、風呂わいてんで。先入り?」
「マジで?じゃあ入ってくるー」
「…」
え、兄貴。お風呂わいてたの?
あたし知らなかったんだけど。
先入りたかったな…。
そう思って、思わず健をじっと見ていたら、ふいに目が合って…
「…え、何。世奈」
「へ、」
「一緒に入る?」
そう言って、健は悪気のない笑顔でニッコリ笑った。