兄貴がイケメンすぎる件
あの頃のあたしは、まだキスとか知らなかったし、健が何をしたのかわからなかったけど…。
キスされた直後、周りの大人達はただ笑ってて、やたら「可愛い」を連呼していたことは覚えてる。
あぁ…可愛いって言ってないで止めさせてよね。
あれからあたしは健が泊まりに来る度にキスされてたんだから。
******
そして、それからテレビを見ながら晩ごはんを待っていると、やがて健がお風呂場から戻ってきた。
「あがったよー」
しかし健がそう言ったのもつかの間、兄貴は健を見るなりびっくりした様子で言った。
「は、お前何やねんそれ!?」
「え、何が?」
兄貴の言葉に、あたしも気になって健を見てみるけど、別に健に変わった様子はない。
健は普通に家から持ってきたらしいスエットを着ているだけだけど…。
すると兄貴は、唐揚げを皿に盛り付けながら言った。
「お前な、男は普通風呂上がりは裸やろ!?」
兄貴は健にそう言うと、まるで「あり得へん!」とでも言いたげに健を見遣る。
いやいや、あり得へんのは兄貴だからね。
確かに兄貴は、風呂上がりは普通に平気で裸でリビングに来るけど…。
あたしとしては、兄貴には本当にそれを止めてほしい。
っつか、健を見習って、兄貴。
「いや、兄貴。正しいのは健だかんね」
あたしがそう言うと、健は笑って兄貴に言った。
「え、勇斗くんはいつも服着ないの!?」
「当たり前やん。暑いねんもん」
「へー、意外」
健は兄貴とそう言葉を交わすと、テレビを見ているあたしの傍にやって来た。
「…ねぇ、世奈」