兄貴がイケメンすぎる件



「は!?ちょっとあんた何で人の部屋勝手に入ってきてんの!?」



まさかそこにいるのが健だとは思わなかったあたしは、そう言うと傍にあったクッションでそいつを一発殴る。


いや、勝手に入るとかあり得ないから!

ここ一応女のコの部屋だし!

しかも寝てる最中だったし!



「あっ、まさかあんた夜這いとか考えてっ…」

「うるせーよ」

「!」



あたしが独り興奮気味になっていると、健はそう言って左手であたしの口を塞いだ。



「勇斗くんが起きてくるだろ、」

「…」



本当…何なの?

人が気持ちよく寝てたってのに。



健はあたしの口から手を離すと、暗闇の中であたしに言った。



「…夜這いなんかじゃないよ」

「じゃー何、」

「俺は、ちゃんと世奈と話したかったの」

「…何を」



未だ不機嫌なままあたしがそう言うと、健はベッドの上のあたしの隣に座って話を続ける。

明かりが小さな豆電球だけだったから、健の顔はよく見えなかったけど、こっちをちゃんと向いていることくらいはわかった。



「…今まで、冷たくしてごめんね」

「!…え、」

「何か…今日世奈怒ってるみたいだったから、ちゃんと謝っといた方がいいのかなーと思って」

「…」



健はそう言って、あたしの言葉を待つ。

一方、突然謝られたあたしは、びっくりしてなかなか声が出せない。


だって…あの健が。

「冷たい」以上に「冷たかった」あの健が、あたしにちゃんと素直に謝ってきたんだよ。

こんなこと…絶対ないと思ってた。



しばらくあたしが黙っていると、その沈黙に耐えられなくなった健が、また口を開いて言った。



「何か言ってよ」

「え、」

「っつか…まだ、怒ってる…よね?だって今日、俺世奈に凄い避けられてたし」


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