兄貴がイケメンすぎる件
「え…何で?」
健の言葉に、あたしはちょっと笑って言った。
「あたしが早月翔太とチュー?いや、ないない。絶対ないから、」
そう言って、ケタケタと健の前で笑って見せる。
きっと健は、早月翔太があたしのことを好きなのを知ってるから不安なんだろうけど、はっきり言ってあたしはアイツのことは好きじゃない。
(だからってキライではないけど)
あたしがそう言うと、健は少し安心したように言った。
「…そっか、」
「うん、そうだよ」
「ならいいんだ」
そう言ってやっと笑顔を見せてくれたから、あたしも内心安心した。
あぁ…これでやっと寝れる。
「ってかもう寝るよ。明日も学校なんだからさ」
「うん。じゃあせっかくだから一緒に寝…」
「ダメ」
「ちぇ~…つまんないの、」
いや、つまんないって何よ。つまんないって。
「いいから、あんたはさっさと自分の部屋行け」
そう言って、あたしが健を部屋から追い出そうとしたら、ふいに健が「あ、そうだ」と何かを思い出したようにしてあたしを見た。
「なに?」
まだ何か用か、
そう思っていたら、次の瞬間あたしが避ける隙もなく健の顔が近づいてきて、あたしは一瞬だけ健におでこにキスされた。
「!?…っ、」
「おやすみのチュー」
健はそう言って悪戯に笑うと、「じゃあおやすみ」って言ってようやくあたしの部屋を後にする。
ふ、不意打ちっ…。
あたしは突然の健の行動に独り頬を赤く染めると、ベッドの上でぎゅっと目を瞑った。
…しかしその後、しばらくなかなか寝付けなかったのは言うまでもない。