兄貴がイケメンすぎる件
掲示板に貼られている紙に気づいた美桜が、それを見て口をぽかん、と開ける。
A4くらいのサイズのその紙は二枚あって、そこにはあたしが付き合っていた彼氏の名前全てに、
初めてキスした時の場所やその時の思い出、
挙げ句の果てには中学生の時に元彼と撮ったチュープリまでその紙に貼られてあった。
「すげーな、これ」
「やばくね?」
「っつか、工藤世奈って誰、」
他の生徒達が口々にそう言うなか、あたしはその紙から逃げるように目を背ける。
すると、目を遣った先には、ちょうど昨日あたしにからんできた3年の先輩達がいて、その瞬間先輩達はニヤリと不気味に笑ってあたしに言った。
「あんたさ、やっぱ遊んでんだね」
「…は、」
「昨日、翔太くんと二人で出掛けた罰よ。これを見て、翔太くんにも嫌われるといいわ」
「!」
先輩達にそう言われて、あたしはやっと気がついた。
そう言えば、昨日…
“もう二度と翔太くんに近づかないで。じゃなきゃアンタのヤバイ噂学校中に撒き散らしちゃうから ”
…そんなことを言われてたっけ。
うわ、忘れてた。
あたしが独りそう頭を抱えていると、隣にいる美桜が、何かに気づいて言った。
「…あっ、ねぇ世奈」
「うん?」
「翔太くん、来たんじゃない?」
美桜がそう言って指を差したその先をたどってみると、早月翔太が女子生徒達を引き連れて登校してくるのが見えた。
「!!」
その瞬間…
“アイツにだけは見られたくない”
何故か素直に、そう思った。