兄貴がイケメンすぎる件
そして、あたしの腕を掴んだまま走ると、やがて何故か体育館に到着した。
誰もいない、静かな体育館であたしが息をきらしていると、まだ体力が余裕そうな早月翔太が言う。
「はーっ、すっごいドキドキした!」
「!」
「人前で世奈ちゃんにチューとか、やばいな!」
「え、」
早月翔太はそう言うと、本当に照れたようにして自身の髪をグシャグシャと掻き乱す。
一方、あたしはそんな早月翔太が意外すぎて思わず「嘘だ」と声を漏らした。
「…嘘だ」
「え?」
「凄い余裕だったじゃん。ずっと平気そうに見えたよ」
あたしがそう言うと、早月翔太は「だってさ」と言って話し始めた。
「チュープリとか、普通に妬くでしょ。何あれ。しかも本物っぽいし」
「!」
「そしたら何か悔しくなって…僕が一番凄いことしてやると思って」
「…」
「ヤキモチ妬きすぎて、世奈ちゃんの12人目の彼氏とか言っちゃった」
そう言って、早月翔太は照れくさそうに笑う。
そんな姿に、あたしが思わずドキッとしてしまった、その瞬間…
「何だソレ」
別のところから、誰かの声が聞こえてきた。
「え、」
誰?
そう思って振り向くと、そこには…
あたし達を不機嫌そうに見つめている、健がいた。