兄貴がイケメンすぎる件
早月翔太がそう言うと、池端先生は「そうか」とそれを了承した。
「素直にそう言ってくれれば話が早い」
だけどもちろんあたしは納得いかなくて、抗議しようとするけどそれを早月翔太に止められてしまう。
「先生、何も早月翔太までっ…」
「世奈ちゃん」
「!」
「僕は大丈夫だから、」
早月翔太はそう言うと、あたしに向かってニッコリ笑う。
…なんで、平気でいられるの?
だって、停学処分だよ?
しかも、早月翔太は絶対悪くないのに。
「でも…」
それでもあたしが納得いかないままでいると、池端先生は引き出しの中から一枚のプリントを取り出しながらあたしに言った。
「…ほら、そういうわけだから工藤、お前はさっさと教室に戻れ」
「!」
「お前の身代わりになってくれた早月に、感謝するんだな」
池端先生はそう言って意地悪い笑みを浮かべるけど、早月翔太は「気にしないでいいよ」って、表情と口パクであたしにそう伝える。
…気にしないで、なんて…
そんなふうにいられるわけないじゃん。
池端先生、最低だよ。
関係ない早月翔太まで巻き込んで。
あたしはそう思いながらも、池端先生がうるさいから、しぶしぶ職員室を後にした。
…だけど、何だろう。
あたしは、早月翔太に対して「申し訳ない」っていう気持ちの他に、今は妙にドキドキしてたまらない感情を持っている。
あたしはそのドキドキを抑えると、重たい足取りで教室に向かった。