兄貴がイケメンすぎる件


「そっ…」



そんなこと言われると、調子狂うじゃん。

ますます“デート”を意識しちゃう。


あたしが独りそう思っていると、やがて健が兄貴に言った。



「じゃあ勇斗くん、行ってくるね」

「おぅ、ほんま気ぃつけてな」

「だーいじょーぶ、」



健はそう言って左手を兄貴にひらひらさせると、先に外に出る。

そしてあたしも玄関から出ると、なんだか妙な緊張感に襲われた。


なんだろう…デートなんか慣れてるはずなのに。

大好きなアーティストに会えるから?

うーん、何故か、こうやってると恥ずかしい。



独りそんなことを考えながら歩いていると、健がそんなあたしに言った。



「…ねぇ」

「う、うん?」

「なんかさ、世奈が黙ってると不気味なんだけど」

「!…は、」

「何か喋ってよ」



健はそう言うと、あたしをチラリと見る。


ってか、不気味って!

つーかそもそもあたし、そんな喋る人じゃないよ!?



「誘ったのはあんたなんだから、あんたがリードして喋ってよね」



あたしがそう言うと、健はちょっと俯いて言った。



「だって…俺、お前と違ってデートとかしたことないし」


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