兄貴がイケメンすぎる件
あたしは独りそう思うと、そのままふと立ち止まる。
すると、突然動かなくなったあたしに健が振り向いた。
「…どした?グッズでも買う?」
「…」
「世奈?」
「…」
…しばらくは、大好きなアーティストに会えるからって浮かれていたけど…。
やっぱりあたし、このままじゃダメなような気がする。
あたしはそう思うと、目の前の健に言った。
「…健」
「?」
「あたし…
やっぱ、デート出来ない」
「…は、」
そう言って、健を見れずに俯く。
あたしが健を傷つけてしまうことは、わかってる。
でも、それでも出来ないんだ。
あたしが俯いていると、健が納得のいかなそうな顔をして言った。
「いや、何言ってんの。お前が大好きなアーティストのライブだぞ?」
「…そうだけど」
「じゃあ何で、」
「…」
「このチケットとるの、どんだけ苦労したと思ってんだよ。世奈のためだけに買ったのに」
健はそう言うと、不安げにあたしを見つめてきた。
そんな健に、あたしは声を震わせて言う。
「だって…」
「…」
「だって、アイツは…」