心も体も、寒いなら抱いてやる
「ところで、お母さんの具合はどう?」

声のトーンを落として花蓮がたずねる。

「うん……今のところ良くも悪くも、ってところかな」

「そう……、お父さんは?」

「特に何も。連絡してないし、向こうからも来ないしね。少し落ち着いたら太一にも話さないといけないんだけど」

家のことを考えると、マキシムのすばらしく美味しいミルフィーユも、口の中でもそもそするだけだった。


午後3時になって、そろそろ帰るね、ケーキごちそうさま、と椅子から立ち上がると、タイミングを計っていたかのように俊が2階から降りてきた。

「今日はまだ明るいから一人で大丈夫だよ。お疲れさま」

「散歩に行く」

「散歩?」

「ビィの散歩」

その気配を察したのか、ビィが喜んで足元でくるくるまわっている。

「良かったね、ビィ。これからお散歩だって」

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