心も体も、寒いなら抱いてやる
公園の駐車場に車を止める。

ドアを開けてやると、待ちきれないというように、ビィが車から飛び降りた。

行き先がわかっているのか、公園に向かってぐいぐい引っ張る。

広い公園には入り口が3か所あって、どこから入ってもまずは丘を登るようになっている。

木でつくられた階段の両側にはカシや松の木が茂り、大きな影をつくっている。

ビィは途中、木の根の匂いを嗅いだり、草むらに顔をつっこんだりしたかと思うと、短い肢を振り上げて、家の中では見せない快活さで階段を駆け上がっていく。

一方、後部からはスパスパとサンダルを引きずる気の抜けたような音がする。

みのりは後ろを振り返る。

「ねえ、なんで犬の散歩、それもこの公園に来るのにサンダル履いてきたの?」

「履きやすいから」

「でも歩きにくそうだけど」

「全然。すっげー歩きやすい」

むきになってスパスパスパスパ速度を速め、みのりを追い越していく。

「それならこれ」、と俊にリードを渡して、みのりも俊を追い越す。

2人が駆け足になるとビィも興奮してスピードを上げた。


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