心も体も、寒いなら抱いてやる
「俊はぎりぎりまで寝てるから食べちゃって」

みのりが椅子に座ると、クリーム色の柔らかな色合いの萩焼の茶碗にご飯をよそってくれた。

わかめとお豆腐の味噌汁を、まずすする。

煮干しのだしがよく利いている。

「おいしい。私、花蓮と結婚したい」

ここのところ疲労感満載の心と体に、花蓮の気配りがしみわたる。

会社で身を粉にしてお仕えし、ぼろ雑巾のようにくたびれた世のサラリーマンたちも、きっと家に帰ってこんなひとときに癒され、再び満身創痍で会社に向かうのだろう。

味噌汁の美味しさに浸る実りの様子を見て「やあよ。私、ブルース・リーみたいな男と結婚するんだから」と、花蓮が笑う。

「え?花蓮の好きなタイプってそんなリアル筋肉マンだったの?」

「そうよ」と、花蓮は自分の茶碗にもご飯をてんこ盛りによそった。
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