心も体も、寒いなら抱いてやる
「私ね、俊がそのチョコレートをいつまでたっても食べないから、いらないのかと思って食べちゃったの。そしたら俊、すごい怒っちゃって。それこそ涙浮かべながら怒ったのよ。だからチョコぐらい買って返すわよって逆切れしたらよけいに怒って、それはみのりからもらったチョコなんだ!って」
そこで花蓮はその時の俊を思い返して、ふふっと笑った。
「みのりはね、俊の初恋の人なのよ」
「まじ……?」
「みのりはタンポポみたいなんだって、小学生の頃よく自慢してた。俊はね、タンポポの花が大好きなの」
強い風が吹き、花蓮の長い髪が舞い上がる。
「じゃあさ、俺も告白する。おれの初恋は花蓮さん」
「え?」と開きかけた唇を、太一が唇でふさいだ。
―――完―――
そこで花蓮はその時の俊を思い返して、ふふっと笑った。
「みのりはね、俊の初恋の人なのよ」
「まじ……?」
「みのりはタンポポみたいなんだって、小学生の頃よく自慢してた。俊はね、タンポポの花が大好きなの」
強い風が吹き、花蓮の長い髪が舞い上がる。
「じゃあさ、俺も告白する。おれの初恋は花蓮さん」
「え?」と開きかけた唇を、太一が唇でふさいだ。
―――完―――
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残業してれば手伝ってくれるし、荷物を運んでいれば「僕持ちますよ」と運んでくれて、ちょっと飲んで帰ろうよと言えばやっぱりたいていは「いいですよー」とつきあってくれる。
どんなシーンでもいつも「いいですよー」と言う感じ。
不潔には見えないので許されている、目にかかるほどのぼさぼさの髪と、今時あまりみかけない茶色の分厚いフレームの古臭い眼鏡。いつも着ているペラッとしたスーツはまるで制服のようだ。つまりもパッとしない感じなのだけど、それでもなぜかそれほどダサく見えないのは細身で頭が小さくて、目鼻立ちがすっとしているせいルックスのせいか。
「青野草汰」という苗字から、私は青野君を見ると野原でさわさわと風に揺れている野草を思い浮かべてしまう。どんなときでも風に身を任せて楽しんでいるような。
他の女子たちの評判も悪くない。ただ男っぽさが感じられない。
「青野くんて優しいし雰囲気も悪くないのに、パンチがないよね」
数日前、エレベータの前で一緒になった青野君にそう言ってみた。
「パンチ?」
「うん。なんかさ、もう少しグイッとしたところがあればすごいモテそうなのに」
今考えれば、自分のことを顧みず随分と身の程知らずなことを言ったものだと思う。青野君は気に留めた風もなく、ちょっと頬を緩めただけだったけど¥。
ひょうひょうとして優しくて、そばにいると安心できる青野君。
こんなに私のお願いを何でも聞いてくれるのは、もしかして私のこと好きだったりして。でも残念だけど彼氏には物足りないよね、なんて思っていた。
それなのに――
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