心も体も、寒いなら抱いてやる
その言葉を聞いて最後の階段を降りようとしていた俊は階段を駆け上り、花蓮に掴みかかそれをあわててスーツ君が押しとどめる。

「もう花蓮さん、勘弁してくださいよ。俊を煽らないで下さいよ。ビィのことになると俊がマジ切れするって知ってるくせに。もうほんとに早く行かないとやばいんすから」

花蓮を睨み付ける俊の肩を必死に押さえつけて懇願する顔は本当に困っている。

と、俊は視線を花蓮の後ろにいたみのりに移し、
「おい、みのり、今すぐ病院にビィを連れて行け。で、すぐに状況を報告しろ」
と怒鳴って階段を下りて行った。

え、だからなんで怒りの矛先を私に変えるかなあ……。

言葉を発する間もなくビィを抱いたまま突っ立っているみのりにスーツ君は、
「すいません、みのりさん、始めましてなのに申し訳ないですけど、こんな状況なのでビィをお願いします。僕、マネージャーの田口です。このお詫びとお礼は後で必ずしますので」
と言って頭をぺこっとさげ、あわてて俊の後を追って階段を下りて行った。

ドアがバタンと閉まり、車が慌ただしく発進する音が聞こえた。
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