心も体も、寒いなら抱いてやる
花蓮が入れたてのコーヒーとクッキーをトレイに乗せて戻ってきた。

「テープ起こしって想像以上に時間かかるね。安いバイト料で引き受けて損しちゃったね」

はい、どうぞと、花蓮がお母さんみたいなしぐさでみのりの前にコーヒーを置いた。

みのりはコーヒーのカップに鼻を近づけ、大きく息を吸う。

「あー、いい香り」

香ばしい匂いが鼻腔を通って体中に満ちていく。

「あ、みのりはミルク入れるんだったっけ?」

いったん座った花蓮がミルクを取りに再び立ちあがろうとする。

「うん。あ、いい。自分でとってくるよ」

年中お邪魔しているので、花蓮の家は勝手知ったるなんとやら、なのである。
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