心も体も、寒いなら抱いてやる
「太一はみのりには知られたくなかったのよ。あんたは太一のことになると無鉄砲に突っ走るから、“姉ちゃんに知られたらやばい”って思ったんじゃない」


 煮立った鍋からエビや白菜をてんこ盛りによそいながら母が笑う。

「今日さ、花蓮の家で俊君に久しぶりに会ったの。誰だかわからないくらい大きくなっててびっくりした」

「そりゃもう大学生だもの。一番の成長期だし。太一だってでかくなったじゃない。昔は太一と仲良しでよくうちに遊びに来てたけど、可愛いくて素直で、どんなふうに成長したのか見てみたいわ。素敵な男になったんじゃない?」

お母さん、今は素直でも可愛くもないよ。

でも今は、日本中の女が抱いてほしいと騒ぐ、あのルカが俊なんだよ、ということは黙っていた。
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